2007年12月05日

【白衣のマーケター】大病院信仰の謎

「3時間待ちの3分診療」と揶揄されるように、大学病院などの大病院の外来患者への対応ぶりは評判が良くありません。とはいいながら、大病院の待合室には患者があふれています。この矛盾した患者の行動は何を意味しているのでしょうか。

たしかに大病院は専門科目も多く、検査機器も充実しています。医師の質についても優秀な勤務医が所属している印象です。小売業にたとえると老舗の百貨店のイメージです。

「かかりつけ医」としてのクリニックに対する患者の意識はコンビニではないでしょうか。近くて便利。ある程度の品揃え。

しかしながら、百貨店とコンビニの比較により、大病院とクリニックの役割の違いを分析・検討することは全く意味がありません。

なぜなら、クリニックはコンビニではないからです。

東京都医師会のホームページに「かかりつけ医」の解説(定義)があります。

@患者の健康相談が気軽にできる「パートナー」
A患者の症状を専門医と結びつける「仲人」
B患者の家族を健康に導く「カジとり」

「かかりつけ医」には大病院では代替できない明確な役割があるのです。川上・川下でいえば、川上に位置しています。誰よりも先に患者と向き合い、今後の治療方針を立案する医療サービスの戦略家としての役割です。

上記@ABについては、医師側から見たとき、当たり前すぎて今更その定義が正しいかどうかを議論すること自体違和感があることなのかもしれません。

一方患者の方はどうでしょうか。大病院の外来の多さの事実を考慮した場合、患者が「かかりつけ医」のことを@ABのように認識しているとは思えません。

・健康相談の「パートナー」を無視して、見ず知らずの医師にかかるでしょうか?
・近所に専門医を紹介してくれる「仲人」がいるのに、飛び込みで専門医と付き合うでしょうか? 

このような不可解な行動を患者がしている理由はただひとつ。患者は近所のクリニックを「パートナー」「仲人」「カジとり」とは認識していないのです。

2006年2月の新潟県健康福祉部の医療ニーズ調査によると、診療所外来患者の70%弱が、他の課題を抑えて、クリニックに求めるもので最も優先される課題として「医療の技術」を挙げています。

患者は近所のクリニックのことを、大病院と同じ土俵で競争している、医療技術のスペシャリストと見ているのだと思います。規模の大きい小さい、専門の幅が広い狭い、医師の質が高そう低そうといった、本来の「かかりつけ医」の役割とは関係のない評価項目において、大病院を選択している可能性が大です。

誤解があるといけませんので念のために書いときますが、クリニックの医療技術の質はどうでもいいということではありません。「かかりつけ医」という医療サービスの核の部分、つまり「パートナー」「仲人」「カジとり」という役割が、ターゲットである患者に全く理解されていないのではないかという問題提起です。

患者とクリニックの間の認識のズレを合わしていくのも医療マーケティングです。患者に「かかりつけ医」の正しい概念を認識してもらい、大病院に代替できない存在としてのクリニックに来院してもらうことが重要です。

認識のズレの解消は医療界全体の課題ともいえますが、個々のクリニックがマーケティングに取り組むことにより、その集積が患者の誤解を解消していくのだと思います。

次回につづく。