2007年12月09日

【白衣のマーケター】紳士淑女とモンスターとのお付き合い

北里大学医学部で医療現場の危機管理を研究している和田耕治氏が、モンスターペイシェントを特集したテレビ番組の中で次のようなコメントをしていました。

「 『患者様』 という扱われ方が一部の患者に過剰な権利意識を与えている 」

そして「患者様」という言い方をやめて「患者さん」に呼称を戻している医療機関が増えているというのです。

質の高いサービス業を目指している企業の世界では、「お客様」が当然の呼称であり、「お客さん」はありえません。二流・場末のサービスだと消費者に思われてしまいます。ひいてはブランド力が失墜し、経営が立ち行かなくなります。

医療がサービス業であるかどうかの議論もありますが、「患者さん」に呼称を戻してモンスターペイシェント問題に対処しようという医療機関の発想に、改めて医療のサービス業としての特殊性を感じました。

一部のモンスターペイシェントのために、本当に「患者様」という呼称を廃止してしまっていいのでしょうか。

患者と医師がお互いに尊敬しあい、信頼が醸成されたコミュニケーションをとるためにも、「患者様」という呼称は必須であると当ラボでは考えます。患者を神様として扱うためにではありません。最低限のたしなみ。常識の世界です。

安易に「患者さん」に呼称を変えるだけの小手先の対処、逃げ方は、長い目で見ると病院・クリニック経営にマイナスの影響が出ると思います。

モンスターペイシェントの問題が深刻化しています。

読売新聞の調査によれば、
直近1年間に院内で暴力を受けたケースが430件、理不尽なクレームをいわれたケースが990件とのことです。

これらは氷山の一角でしょうが、医療従事者の労務管理上も解決しなければならない課題です。

マニュアルづくり、担当者の設置、警察・弁護士との連携等の基本的な危機管理はもちろんですが、今一度医療スタッフ全員の意識を総点検してみましょう。

「患者様」を「患者さん」に切り替える発想自体、患者を下に見ている考え方です。

「お客様は神様です」といった昔の日本的な流儀を提案しているのではありません。この流儀はスタッフのモチベーションを低め、ブランド戦略的にも事業戦略的にも二流三流の手法だからです。

世の中の進んだ事例を研究し、病院・クリニック経営に取り入れてはいかがでしょうか。

ホテル業界で世界トップクラスの評価を受けているホテルのひとつにザ・リッツ・カールトンがあります。

日本支社長の高野登氏が書いた
「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」
を見ると、リッツ・カールトンのサービスの真髄がよく解ります。

「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」

是非一読されることをお勧めしますが、象徴的な部分だけをご紹介しますと、

「 "紳士淑女" のお客様にサービスする自分たちスタッフも "紳士淑女" である 」

というお客様とスタッフが対等な立場を明確にしていることです。

スタッフは "紳士淑女" に見合うような自分になろうと努力します。人間性を高めるような雰囲気が備われば、サービス業としてのホスピタリティは向上します。

ザ・リッツ・カールトンにはスタッフの意識改革を行う仕掛けがあるのです。この仕掛けがいかにホテル内のモンスターの発生を抑えているかを理解する必要があります。

もともとのモンスターもいれば、普通の人をモンスターに化けさせていることもあれば、モンスターが癒されて "紳士淑女" になることもあるのです。

ザ・リッツ・カールトンの顧客戦略はお題目ではありません。ホテル業界における名声と利益という結果を手に入れています。

医療マーケティングの役割のひとつにスタッフの意識改革があります。診療圏において貴院をどのような医療機関にしたいのか、そのためにはどのような行動をスタッフにとってほしいのか、その方針を内外に情報発信することによって経営力は高まっていくのです。

医療マーケティングというと、とかく患者を意識しがちですが、自院のスタッフに向けた経営手法でもあるのです。

次回につづく。